よくある誤解と正しい知識

よくある誤解や勘違いを科学の視点から分かりやすく解説しています

ライオンは子落しをしない

「獅子の子落し」ということわざがありますが、これは子供を厳しく育てることのたとえであって、実際にライオンが子供を崖から落とすという意味ではありません。母ライオンは我が子を大切に育てることが分かっています。

ここで言う獅子とは、ライオンを元にした想像上の生き物です。狛犬や獅子舞の姿を考えて差し支えないでしょう。元になっているとはいえ、もはやライオンとは別のものともいえます。獅子の子落しの「獅子」とはそもそもライオンですらないということです。


同じような例として、キリンと麒麟(きりん)、バクと獏(ばく)が挙げられます。

キリンビールのロゴには馬のような奇妙な生き物が描かれていますが、これが麒麟です。キリンビールの「キリン」とは、アフリカに住む実在のキリンではなく、中国の伝説上の動物である麒麟のことなのです。

また、夢を食べる、などといわれる獏も、マレーバクのような実在のものではなく、伝説上の生き物です。こちらも中国から日本へ伝わってきました。

ただし、これらは伝説上の生き物のほうが先に生まれ、あとから外見が似ている動物に同じ名前がつけられたようです。いずれにしても、同じ名前を持つ空想上の動物と実在の動物を混同しないように気をつけねばなりません。


結論: 獅子の子落しの獅子とはライオンのことではない。


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ヒトはサルから進化した?

ヒトはサルから進化した、とはよく言われますが、誤解を招く曖昧な表現と言わざるを得ません。ここで言うサルとは、何百万年も昔に生きていた、ヒトやチンパンジーの共通の祖先のことです。


「サル」と聞くと、どうしてもニホンザルやチンパンジーなど、いま生きている動物を思い浮かべてしまいます。人類がこれらの現生種から進化したわけではもちろんありません。この先何百万年待っても、チンパンジーがヒトになることはありません。

今から700万年ほど遡ると、私たち人類の祖先とチンパンジーの祖先は一致します。言い換えれば、ヒトとチンパンジーは約700万年前に共通の祖先から分かれました。その当時の姿は、現生のヒトともチンパンジーとも異なるもので、少なくとも今の私たちから見れば幾分「猿っぽかった」と言えるでしょう。そこで、当時の動物をサルの一種と考えて、ヒトは(700万年前の)サルから進化した、という表現が成り立つわけです。

ただし、その700万年前のサルから、チンパンジー(やボノボ)も同じく進化していることには注意してください。進化とは人間だけに起きているものではなく、基本的には全ての生物が多かれ少なかれ経験していることです。

ヒト、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンの進化の系統樹


ところで、本来「サル」という言葉は、霊長目(サル目)に属する全ての動物を指します。霊長目というとニホンザルやチンパンジーを始め、ゴリラ、オランウータン、メガネザルなどが挙げられますが、実はヒトもその一員です。つまり生物学的には、ヒトもサルの一種に過ぎないのです。

結局、人類の進化といっても、分類の上では700万年前の霊長類が現在の霊長類になっただけの話です。猿という言葉が一般的にはヒトを含まないため、ヒトがその昔ヒトの姿をしていなかったことを強調するために、猿から進化した、と盛んに言われるのでしょう。

形質や生活様式が変わっていても、現在でもヒトはサルそのものであり、分類上の大きな変化はありません。


結論: ヒトは700万年前のサルから進化した、サルの一種である。


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