よくある誤解と正しい知識

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犬の鼻は一億倍?

犬の嗅覚は人間よりもはるかに優れていると言われています。特定の物質に限って言えば、人間の百万倍や一億倍といった数字も確かに出てきますが、どんなにおいでもというわけではありません。さらに、「一億倍」というのは、人間が感じる一億倍の強さで感じているのではありません。一億分の一のにおいまで嗅ぎ分けられるという意味です。


嗅覚に限らず、動物の感覚には閾値というものが存在します。これ以上刺激を弱くすると感じられなくなる、という限界ぎりぎりの刺激の強さのことです。たとえば空気中のアンモニアだと、人間の嗅覚では1ppm(0.0001%)程度が閾値となるようです。これは正確な値ではありませんが、仮に正確だとすれば0.9ppmでは感じられず1.0ppmになって初めて感じられることになります。

この「初めて感じられる濃度」が、犬では人間よりもはるかに薄いのです。物質によっては、人間がやっと認知できる濃度の一億分の一まで嗅ぎ分けるといいます。これが一億倍といわれる所以です。

一方で、人間にも得意なにおいがあります。一般に、硫黄化合物のにおいには、人間も敏感に反応します。この性質を利用して、メルカプタンやスルフィドなどの硫黄化合物が、ガス漏れを防ぐための都市ガスの付臭剤として使われています。ひょっとすると都市ガスのにおいに関しては、犬も人間もそこまで感知する能力に差がないかもしれません。


なお、犬が一億分の一まで感じても人間の一億倍の強さで感じるわけではない理由として、実際の臭気濃度と感覚が比例しないことが挙げられます。対数で近似できるとされ、濃度が10倍になると感覚的には2倍の強さに、100倍になってやっと3倍に感じます。つまり1億倍でも10倍に満たないことになります。さらに、きわめて強い刺激は感覚的な強度が頭打ちになることも考えられます。

補足になりますが、厳密には嗅覚の閾値には「検知閾値」と「認知閾値」の二種類があり、前者はにおいの存在を感じ始める濃度、後者はそのにおいが何かを識別できるようになる濃度です。ここでは単純化のため区別しませんでした。


結論: 犬の嗅覚は優れているが、どんなにおいでも人間の一億倍敏感なわけではなく、またにおいを一億倍の強さで感じるわけでもない。


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コメント

犬が、家でにおいで苦しんでるか、心配したので、かなり参考になり助かりました。
ありがとうございます。

  • 2016/05/22(日) 11:34:20 |
  • 埼玉県民です。

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